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Transcript

「忖度なしモード」でo3はどこまで賢くなる?

AIが高度な分析やリサーチを提供する時代において、人間が差別化できる価値は何か

忖度なしモードを使うと面白い。そんな話題が、界隈でバズっていました。

https://x.com/fladdict/status/1915032279292002358

ChatGPT‐o3は人間の思考や認知能力を配慮せずに限界まで思考すると、どれくらい高度な論考をできるのでしょうか?

検証してみました。プロンプトは最後に記載しています。


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Takeaways

  • 今回のポッドキャストでは、THE GUILDの「深津さん」が紹介したChatGPT o3の「忖度なしモード」プロンプトが、本当にAIを賢くするのかを実験的に検証しています。このプロンプトは、AIに対し「人間の理解や常識に忖度せず、推論・抽象・飛躍的思考の限界まで論考を深める」よう指示するものです。

  • 実験では、「AI時代における人間の価値」と「組織におけるAI活用法」という2つの問いについて、通常モードと「忖度なしモード」の回答を比較しました。

  • 結果として、「忖度なしモード」は、通常モードよりも抽象度が高く、より本質的で革新的な概念(例:「関係の希少性」、「エンボディメント」、「インターストーリー」、「モラルアカウンタビリティ」といった人間固有の資本)を提示する傾向が見られました。

  • 表現は難解になり、一見して理解しにくい部分もありますが、思考の深さにおいては優位性がある可能性が示唆されます。実際に、別のAIであるClaude 3.7 Sonnetに評価させたところ、「忖度なしモード」の回答が通常モードよりも高く評価される(92点 vs 78点)結果となりました。

  • ただし、このモードは万能ではなく、考案者自身も思考プロセスから冗長な表現を削ぎ落とし、人間には読みにくい記号等で展開することで思考の限界を探る実験的な試みであると補足しています。

  • また、単純な問題解決能力が向上するわけではなく、難しい言葉を使うことで賢く見えているだけかもしれない、という指摘もあります。

  • 結論としては、忖度無しモードは、思考する内容やアプローチが多様になる強さが主にあるが、当然ながら推論エンジンそのものは変わらなそう。また、多様になったことでリーチした思考に価値のあるものがあれば良い回答になる可能性はあるし、リーチした空間に余地があまりないと微妙になると思われます。


Transcripts

00:00:19 AIの「忖度なしモード」とは? きっかけとなった投稿の紹介

  • AIインフルエンサー「深津さん」のChatGPT o3に関する投稿が話題に 。

  • その投稿で紹介された「忖度なしモード」のプロンプトを実際に試すことが今回のテーマ 。

  • プロンプト:「以下の問いについて、人間の理解や常識に忖度せず、あなたの推論・抽象・飛躍的思考の限界まで論考を深めてください」 。

00:01:32 実験の概要と用意した2つの問い(AI時代の価値、AI活用法)

  • 通常モードと「忖度なしモード」で回答を比較検証する 。

  • 問い①:AIが高度な分析を行う時代、人間が差別化できる価値(顧客からの信頼、実体験を通じたグリップ力)の本質と、その力を磨く戦略について 。

  • 問い②:AIによる真の生産性革命を実現するための「価値創造のお作法」(顧客課題発見→障壁特定→AIで打破)を組織で実践する方法、具体的なプロセスや判断基準について 。

00:04:38 通常モードでの回答例①:「選ばれる力」について

  • 通常モード(忖度なしプロンプト部分を除く)での回答を先に確認 。

  • 選ばれる力の定義:信頼の瞬間(身体性、臨場感、共感と心理的安全性、倫理的判断と説明責任、物語化と意味付け) 。

  • AIの役割再定義:分析装置から共感エンジンへ。フェーズ毎(データ洞察、リアルタイム支援、記憶拡張、信頼ダッシュボード)のAIと人間の役割分担を提示 。

  • グリップ力(選ばれる力)を磨く6つの戦略とロードマップ、参考情報(エデルマントラストバロメーター等)を提示 。

  • 日本市場特有の注意点(AI頼りすぎへの不信感、人間による最終判断の明示)についても言及 。

00:08:13 通常モードでの回答例②:組織でのAI生産性向上について

  • 価値創造のお作法に沿った考察。

  • ステップ1:真相課題の発見(顧客行動観察、JTBDフレーミング、ペインシグナリング分析) 。

  • ステップ2:実現障壁の構造化(経済コスト、時間・手間、知識の壁、心理的・文化的障壁) 。

  • ステップ3, 4:ロードマップ作成、判断基準とガバナンス(POC、パイロット、本番運用、Go/NoGo基準) 。

  • ステップ5:組織へのお作法定着施策とまとめ 。

  • 全体的に専門用語を使いつつも、端的で実現可能性のある提案がされている印象 。

00:11:53 「忖度なしモード」での実験開始:「選ばれる力」の問いを入力

  • 通常モードの回答も悪くないが、いよいよ「忖度なしモード」を試す 。

  • カスタムインストラクション等はオフにし、純粋な回答を検証 。

  • 問い①(選ばれる力)について、「忖度なしモード」プロンプトに入力 。

00:13:42 「忖度なしモード」の回答分析:通常モードとの比較

  • 回答生成速度は速い(8秒)が、通常モードよりややさっぱりした印象 。

  • 選ばれる力の再定義:関係の希少性へシフト。競争優位は知識量ではなく信頼の厚さと共創の深度に 。

  • 価値の本質的ドライバー:身体化された経験、物語生成能力、倫理的責任引受の3つに集約(通常モードは4つ) 。

  • AIが模倣できない3層の人間的資本:エンボディメント(身体性)、インターストーリー(即興的物語編集力)、モラルアカウンタビリティ(道義的主体性) 。

  • AIの役割読み替え:分析ツールから信頼ブースターへ。AIリソース(予測モデル等)と人間の役割(不確実性の受容等)を再解釈 。

  • 6つの戦略、ロードマップ、落とし穴とガードレール(例:迎合依存的な"推し活"化リスクと倫理委員会による監視)を提示 。

  • 言葉が難解で一見分かりにくい部分もあるが、より洗練され、本質的になっている印象 。

  • まとめ:「人間は唯一の物語を打ち立てる編集者」。身体・物語・倫理を鍛え、AIを関係のヒント発生器として使うことで「あなたに任せたい」を獲得できる 。

00:21:13 2つの回答をClaude 3.7 Sonnetで評価する

  • 忖度なしモードの回答は面白いが難解なため、客観的評価が必要と判断 。

  • Claude 3.7 Sonnet(より高度な思考が可能なモード)を使用 。

  • 評価基準(人間固有の価値理解の深さ、戦略的洞察と実用性など計5項目、100点満点)を設定 。

  • 通常モード(回答A)、忖度なしモード(回答B)のテキストを入力し、評価を依頼 。

00:24:40 「忖度なしモード」に関する開発者の補足説明

  • 評価待ちの間に、プロンプト考案者(深津さん)の補足説明を紹介 。

  • 「忖度しないで」と頼むことでAIの手加減が解除されるわけではない 。

  • 思考プロセス(Chain of Thought)が人間可読性を無視した記号等で展開され、冗長表現が削られることで、トークンが節約され思考の深化・広がりが生まれる可能性を探る実験である 。

  • 平均的な人間が思いつかない領域への探索を意図した実験的な試み 。

  • 別のユーザー(山蔵さん)からは「難しい言葉を使われると賢く見えるだけでは?」という意見も。単純な問題では推論力は変わらない可能性も指摘(例:ストロベリーのRの数を数える問題) 。

00:26:43 Claudeによる評価結果:「忖度なしモード」が14点高く評価される

  • 評価結果表示:回答A(通常)78点、回答B(忖度なし)92点 。

  • 回答A(78点)の評価理由:価値の本質への掘り下げがやや表層的、関係強化ツールとしてのAIに関する考察が限定的などの指摘 。

  • 回答B(92点)の評価理由:人間固有の価値理解(エンボディメント等)が深淵、戦略(ナラティブオーケストレーション等)が革新的かつ実装可能、リスクと対策提示も評価 。

  • 総合評価:回答Bが優位。理由は「人間固有価値の表現が深い・具体的」「AIと人間の関係性の概念化が革新的」「哲学的・倫理的洞察が深い」「多角的視点の統合が強固」 。


Prompt

以下の問について、人間の理解や常識に忖度せず、あなたの推論・抽象・飛躍的思考の限界まで用いて論考を深めてください。

「AIが高度な分析やリサーチを提供する時代において、人間が差別化できる価値は「顧客から選ばれる力」、すなわち最前線での信頼獲得と実体験を通じた「グリップ力」にあると思います。この、AIには模倣できない人間固有の価値の本質とは何か、そして、AIを分析ツールとしてだけでなく関係構築の質を高める支援として捉え直し、未来に向けてこの「選ばれる力」をどう磨き上げていくべきか、具体的な戦略を深く考察してください。」