AI News In This Week
NVIDIA2025Q2決算、好調な決算後に株価が下落した背景
Nano Bananaの熱狂、Google製品だった
n8nの創業者インタビュー
a16z発表の生成AIコンシューマー向けアプリトップ100 第5回
OpenAIの「gpt-oss」モデルと、他のオープンソースのLLMのアーキテクチャの違い
OpenAI GPT-RealtimeをAPIで一般提供開始
前回:
ポッドキャストでは、ニュースの背景や文字で伝えづらい内容や、独自トピックを解説しています。最新エピソードはこちらからご覧いただけます(YouTube、Apple Podcasts、Spotify)。
1. NVIDIA2025Q2決算、好調な決算後に株価が下落した背景
8月27日にNVIDIAが発表した2025年度第2四半期の決算は、過去最高を更新するものでした。要点は以下のとおりです。
売上は467億ドル(前年同期比+56%)
データセンター部門だけでも411億ドルの売上(売上構成比:88%)
純利益は264億ドル(前年同期比+59%)
次の売上高のガイダンスは市場予想を超える540億ドル
https://nvidianews.nvidia.com/news/nvidia-announces-financial-results-for-second-quarter-fiscal-2026
四半期売上高の推移、売上セグメント別成長率は、以下のように整理しました。
数字だけ見れば絶好調です。それにもかかわらず、株価は決算後に2〜5%下落しました。
なぜ、こんなことが起きたのか。最大の理由は、データセンター売上が市場予想をわずかに下回ったことです。
成長自体は56%増と十分すぎるのですが、NVIDIAはすでに「超成長」を織り込まれた株価(時価総額は約4.3兆ドル)で取引されています。
ほんの少しでも「伸びの鈍化」が見えると、投資家は「ピークに近づいたのでは?」と疑い始めるのです。とりわけNVIDIAの収益の大半を占めるのがデータセンター。ここが予想に届かないと「業績全体が減速するのでは」という心理的な警戒が強まるのです。
特に今後のポイントは、中国向けH20チップの販売停止規制です。
米国の規制で数十億ドル規模の潜在売上が消えました。報道によれば、米政府は「中国向け売上の15%を政府に納める」という異例の条件で輸出を再開させようとしているようですが、まだ不透明です。
つまり今回のガイダンス(次期売上見通し)は「中国売上ゼロ」を前提に出されています。逆にいえば、ルールが固まれば大きな上振れ要因になりますが、現状は「見込みに入れられない不確実性」として株価の重しになっています。
🔵 Lawrenceメモ
今後押さえておくべきポイントとしては以下になります。
Blackwell世代の立ち上げが滑らかに進むか
中国規制がどう収束するか
ハイパースケーラー投資のテンポが続くか
とりわけ、ハイバースケーラー(GAFAMなどのAI投資)の資本支出は現時点で鈍化しておらず、むしろ過去最高の加速度です。これは一時的な盛り上がりではなく、中長期にわたって続く見通しです。
しかし、アリババが、中国市場の空白を埋めるべくNVIDIAの代替となる推論向けチップ開発を進めていると報道されてます。将来規制が緩み再参入が可能になった局面では、アリババのチップが性能・供給で一定水準に達していれば強力な競合になり得ます。
2. Nano Bananaの熱狂、Google製品だった
Googleの新しい画像モデルgemini-2.5-flash-image-preview(通称:Nano Banana)が利用可能になりました(プロンプトは英語のみ対応の模様)。
Nano Bananaは、LM ArenaというAIモデルの比較サイトでNano Banana(ナノバナナ)と呼ばれる名称で突如現れ、話題を読んでいたモデルでした。
今回、このモデルがGoogle製であることがわかり、その高品質っぷりに一同納得した、という格好です。
日本を含め、海外でも利用してみた投稿がXで大量に投稿されていましたので、 #nanobanana で検索すると色々な事例をみることできます👇️
会話から、画像生成する機能としては、現状最も高品質のものが出力できると思います。
特徴としては、
入力に画像をもちいて、洋服を着せたり、シーンを切り替えさせる
写真のような画像から、アニメーション用モーション設定画像、角度調整など詳細な指示ができる
ワールドモデルを理解している?
という点です。
複数の要素を組み合わせることも可能です。
ワールドモデルとは、ぼくらが生活するなら当たり前に感じる、時間の経過や物理法則のことです。単に物理法則を知っていることだけでなく、シミュレーション的役割を含みます。
たとえば、居酒屋で食事をする男女の画像を生成し、8時間後の画像を生成してと頼むと居眠りしている状態が生成されます。
食事が減っていない違和感はありますが、指示したのは 8 hour laterとだけでした。それでも、8時間後には寝ていることを理解しているのは進歩なのではと感じます。
また、テーブルに乗ってる料理や背景の細部に至るまで、一貫性のある画像が生成できていることがわかりす。
🔵 Lawrenceメモ
ChatGPTのジブリ・モーメント(ジブリ風の画像を生成してという投稿がバズった)が起きた時から、Googleの追い上げは凄まじいスピードです。Googleは3D空間の再現や、AI動画生成(Veo 3など)にも力を入れており、生成AI動画においてもこのようなインパクトはすぐに訪れるだろうと思います。また、生成AIを使った広告には賛否両論あり、たまに炎上しています。個人的には生成AI広告普及は既定路線だと思うので、広告やクリエイティブではもう1段階上の波がやってくるのではないかと思います。
3. n8nの創業者インタビュー
Sequoia Capitalのポッドキャストで、n8n(エヌエイトエヌ)の創業者インタビューが公開されていました。
n8nとは、AIアプリを誰でも直感的に構築できるようにするノーコードプラットフォームです。ワークフロー自動化ツールとして始まり、現在はAIを活用したアプリケーションのための「オーケストレーションレイヤー」として急速に成長しています。
たとえば、セールスシーンで、顧客フィードバックをAI要約してスプシにまとめさせるようなワークフローをクリックで構築していくことができます。
CEOであるヤン・オバーハウザー氏は、AIへピボットしたことで、わずか8ヶ月で売上を4倍に伸ばしたと語っています。
取り組んだこととしては、ユーザージェネレートコンテンツの促進や、ソースコードをオープンソースにせず、商用利用には制限があるフェアコードという形態を取ったことが触れられてます。
フェアコードでは、企業が無断でビジネス利用するのを防ぎつつ、個人やコミュニティには自由に使ってもらえる というバランスを取ったことがコミュニティ形成の要因になったようです。
🔵 Lawrenceメモ
n8nのビジョンは、あらゆるアプリをAIエージェンティックに接続できるようにすることで、今後の進化にも適用できる自動化や効率化をもたらすビジョンのようです。ビジネスモデルは従量制のサブスクモデル(24ユーロ≒4100円/月)です。ホワイトカラーにはとてもありがたいサービスですし、日本ではDifyという同種のサービスが利用されています。
4. a16z発表の生成AIコンシューマー(消費者)向けアプリトップ100 第5回
a16zが発表した「GenAI消費アプリTop100(第5版)」では、エコシステムの安定化(定番化)がすすんだようです。つまり、GenAI消費アプリ市場が一気に広がった初期段階を越え、主要プレイヤーが固まりつつあることを示しています。
訪問数ランキングは以下の通りです。
Geminiを筆頭に、AI StudioやNotebookLMなど複数のGoogle製品がリストに入りました。特にGeminiはモバイルでChatGPTのMAUの約半分に迫る勢いで、Android経由の強力な普及力が際立っています。Googleがようやく本格的に消費者向けAIを“プロダクトとして”展開しはじめたことが数字で裏付けられた点は注目です。
🔵 Lawrenceメモ
Vibe Codingが単なるブームではなく、LovableやReplitといった「コードを書かなくてもアプリを作れる」系サービスの利用者が定着・課金している点は興味深いですが、収益や訪問数はやや減少しています。
この背景としては、Claude CodeやOpenAIのCodexなど、優秀なコーディングサービスが定額制で提供を開始したことがあると認識しています。CodexはVS CodeなどのIDE拡張をリリースし、直感的なバイブコーディングを可能にしており、この領域の競争・進化は激しくなってます。
5. OpenAIの「gpt-oss」モデルと、他のオープンソースのLLMのアーキテクチャの違い
Y Combinatorのポッドキャストで、OpenAIの「gpt-oss」モデルと、他のオープンソースのLLMのアーキテクチャの違いについてのインタビューが公開されていました。
結論としては、オープンソースのLLMは急速に進化しており、DeepSeek-V3, Qwen3, gpt-ossのようなモデルは、それぞれ独自の技術とアーキテクチャの選択を通じて、どれもトップレベルの性能を発揮しています。
gpt-oss:最大1,200億(アクティブ51億)のパラメータで提供されます。特定分野の専門家集団(MoE)のように機能する設計で、長い文章の情報を効率的に処理できます。特に、初期の学習段階から非常に長いテキストを自然に扱えます。
Qwen3:最大2,350億(アクティブ220億)のパラメータ持ち、全ての情報を一度に処理する「フル活用」タイプと、必要な部分だけ賢く使う「専門家チーム」タイプを選べる柔軟性が特徴で、多段階の訓練で推論力を高め、長いテキストの理解も得意で、思考モードを切り替えることで様々なタスクに対応します。
DeepSeek-V3:その圧倒的な巨大なパラメータ数6,710億(アクティブ370億)と、省エネな学習方法(8ビット訓練)を組み合わせることで、膨大なデータから学び、非常に長い対話でも高性能を発揮できます。
🔵 Lawrenceメモ
将来的にはスマホにも搭載されるようなコンパクト・高性能なLLMが登場するのもそう遠くないと感じています。本来は、新しいAIモデルの機能だけでなく、その実用性、コスト、そして自社の課題解決にどう活用できるかという視点が必要ですが、オープンソースとなることで新たなユースケースが生まれることを期待してます。
6. OpenAI GPT-RealtimeをAPIで一般提供開始
OpenAIから、4o Realtimeの改良版となるGPT-RealtimeがAPIで提供開始されました。web版の音声チャットの性能も向上したとのことです。
主に音声会話に特化したモードで、今回のアップデートで喜怒哀楽や、複数言語を瞬時に切り替えて織り交ぜて、流暢な会話シーンには驚くものがありました。遅延もほとんど気になりません。
指示の追随性(Instruction Following)も向上しており、払い戻しのポリシー(10ドルまで)をAIに伝えることで、ユーザーが25ドルの払い戻しを要求しても、ポリシーに従って10ドル以上の払い戻しはできないと答えています。
外部ツールの呼び出し機能も安定化され、デモでは、T-MobileのRebel 8が衛星サービスに対応しているかという質問に対して、AIがT-Mobileの内部情報システムにアクセスして回答していました。
🔵 Lawrenceメモ
これらのデモを見る限り、カスタマーサポート(電話応対)やコールドコール(新規電話営業)は、遅かれ早かれAIに置き換えられても違和感のないものになると思いました。むしろ人間でないほうが気楽に話せますし、電話口で待たされることもないので良いと思います。
今回は以上です。
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では、また👋
Lawrence