Cursor(カーソル)は、AIを統合したコードエディタです。これを開発したのは大学を卒業した若い創業者4人だったのですが、生成AIの市場が拡大するとともに急成長し「ARR(年間経常収益)が1億ドル(約150億円)を超えた」というニュースでテック界隈では先日大きな話題となりました。
https://www.cursor.com/ja/blog/series-b
ぼくも開発にはCursorを利用しており1月から月額20ドルの課金をしています。それまでのコードエディタとは比べ物にならない開発体験で衝撃を覚えました。
そこで、今回はCursorの概要を含め、急成長している背景や創業者のインタビュー記事などを参考に彼らが成長してきた軌跡や背景を解説します。また、Cursorの競合比較(Windsurf)や、今後ビジネス環境へどのような影響を与えるかを含めて今後の展望を考察します。
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Cursor(カーソル):たった2年でARR150億円を突破したAIコードエディタの急成長ストーリー
Cursor(カーソル)は、VS Codeをベースに開発された「AI統合型コードエディタ」です。最大の特徴は、従来の拡張機能やプラグイン型ツールとは異なり、エディタ自体にAIを深く組み込んでいる点にあります。
例えば、「この関数をリファクタリングして」や「新しい機能を追加して」と指示すると、Cursorがプロジェクト内の複数ファイルを参照しながらコードを書き換え、要望に応じた修正コードを自動生成して提案してくれます。
オートコンプリート(補完)も非常に高精度で、一行単位ではなく複数行あるいは関数単位を先読みして提案してくれるので、エンジニア実際にコードを書く手間を大幅に削減することができるのが強みです。
コードベース全体をインデックス化しており、質問や修正指示の際に関連ファイルを自動で特定することもかんたんです。@マークを付けてディレクトリ名やファイル名、関数名を指定して自然言語で要望を伝える、といった操作も可能です。
AIモデルは、OpenAIのo3-miniやAnthropicのClaude 3.7 Sonnet、DeepSeek R1などが利用でき、課金をすれば最大使用量が増加してほぼストレスフリーでチャットをしながら細かい知識がなくても開発ができてしまうエディタです。
結果として、コードの保守から新規実装まで、高い精度とスピードで開発を支援できる革新的なエディタとして急成長を遂げ、2023年のリリース以降およそ世界で数百万人規模もプログラマが日常的に使用するエディタとなったとされています。
公式サイトには採用企業のロゴが掲載されており、OpenAIやDeloitte、Samsung、Shopifyなど有名な企業でも採用されていることがわかります。
Intstacartという企業の開発者はCursorはGithub Copiliotよりも少なくとも2倍の生産性と語っています。
Cursorの創業ストーリー、急成長した背景
Cursorを提供するAnysphere社は、MIT出身の若いエンジニア4名によって2022年に創業されました。彼らは大学在学中から競技プログラミングや研究プロジェクトで実績を残し、卒業後すぐに「ソフトウェア開発を根本から変革するAIツールを作ろう」と起業を決意したと言われています。
背景には、2021~2022年にかけてのGitHub CopilotやOpenAIのCodex登場など、“プログラミングとAI”の融合が急速に進んだ流れがあります。
創業メンバーは「これからは従来の延長線ではなく、一からAIを組み込んだ開発環境が必要になる」と判断し、VS Codeをベースにしつつ「AIファースト」のエディタ設計に踏み切りました。
Cursorの初期版はリリース後すぐに口コミで広がり、2023年半ばには数十万、さらに2024年には数百万の開発者が使うレベルにまで急成長しました。大企業からスタートアップまで取り入れる事例が続々と増え、この要因には、洗練されたユーザー体験と高精度なコード補完機能に加え、セキュリティやプライバシーを重視する企業向けの機能拡充が挙げられると思います。
Anysphere社は積極的に資金を調達し、機械学習モデルの最適化やエディタの機能強化を短い開発サイクルで続け、結果としてARR(年間経常収益)が1億ドルを突破するほどの急成長を実現しました。
Anysphereは2022年に$8Mのシード(OpenAI Startup Fund主導)、2024年8月に$60MのシリーズA(a16z主導)を調達し、この出資者の中にはOpenAIの主要メンバーやGoogleのJeff Dean氏、Stripe/GitHub創業者など錚々たる顔ぶれが並んでおり、こちらも大きな期待を集めました。さらに、2025年1月のシリーズBでは、1億500万ドルを調達しThrive Capital、Andreessen Horowitz、Benchmarkなども参加したことが大きな話題となりました。
評価額は非公開ですが、メディアによればAnysphereはすでに評価額十億ドル台後半とも噂され、ユニコーン企業の仲間入りを果たしています。
Cursorの競合比較:WindSurf
Cursorと比較されるAIコードエディタとして、Codeium社が提供するWindsurfが挙げられます。両者の大きな共通点は、いずれもVS Codeをベースとし、AIを深く統合している点です。
コード補完や自然言語指示でのコード生成、プロジェクト全体を横断する複数ファイル修正など、基本機能はかなり似通っています。
違いを挙げると、Windsurfは「Cascade」というエージェント機能をデフォルトで組み込み、ユーザーが指示を出すとAIが自律的に必要なファイルを編集したりテストを実行したりする点が特徴です。一方Cursorにもエージェントモードはありますが、明示的に切り替えるか、エラー箇所などでAI修正ボタンを押す形で利用します。
Windsurfは個人に対して無料プランを提供して裾野を広げ、よりたくさん利用したい個人へ課金を促すモデルと企業向けプランで収益化を図るフリーミアムモデルを採用しています。価格は月額15ドルからです。
Cursorも月額20ドル程度の有料プランを中心に収益を得ており、個人レベルでも「お金を払ってでも生産性を上げたい」というユーザー層を積極的に取り込みつつ、企業への展開を行っています。
ビジネスモデルはほとんど違いがありませんが、個人レベルでは価格の安いWindsurfの方が手に取りやすいです。Xの投稿ではWindsurfの方を高く評価する声もありますので、これから使い始める人は、Freeプランで2つとも利用してみて感触を確認してみるのもいいかも知れません。
参考:https://codeium.com/blog/pricing-windsurf
AIコードエディタがもたらすビジネス環境への影響を考察する
AIコードエディタの普及は、ソフトウェア開発現場やビジネス全般に大きな変化をもたらすと思います。
まず開発者個人の生産性向上が顕著で、従来比で数倍以上のスピードで実装・テストを行える事例も報告されています。これは企業レベルで見ると、同じ人数・同じ予算でより多くの機能開発が可能になり、リリースサイクルの短縮や新規プロダクトの投入ペース加速につながる利点があるでしょう。
また定型的なバグやエラーはAIが自動で検知・修正提案することが増え、人間はより設計や高度なロジック部分にリソースを集中できるようになるのは望ましいことだと思います。
さらに初心者や非エンジニアであっても、自然言語でAIに指示を出せばある程度のアプリケーションを作れる可能性が見えてきています。以前このニュースレターでは、マイクロSaaSブームの到来について話をしましたが、そのような可能性です。
個人的にもCursorを利用して、開発初心者ながら動くプロダクトを作ることができたので、非開発職おそらくはプロダクトマネージャーなどを含め、IT業界を中心にAIコードエディターの利用は加速するように思います。
個人的に思うコアな影響は、経営層やマネジメント層がイメージをすぐに形にして開発チームにディレクションできることであり、これらを解像度高くチームが共有できることにあるように思います。
その一方で、機密情報の取り扱いやAI依存によるコード品質の過信など、新たなリスクや課題は残ります。セキュリティリスクを許容できない企業では導入は難しいため、導入を見送るケースもあるでしょう。
しかし、既にOpenAIを含めさまざまな企業で実績を出しているAIコードエディターが普及するにつれ、セキュリティポリシーの明確化が行われ、多くの開発現場だけではないビジネス環境に導入されるのではないかと考えています。
つまり、誰でも開発を行い、イメージをプロダクトにできる時代が到来する将来がより近づいたと思うのです。
まとめ
Cursorは「AIネイティブなコードエディタ」として誕生し、すでに多くの開発者や企業を巻き込みながら、わずか数年でARR 1億ドルを超える急成長を遂げた
その裏には、MIT発の優秀な創業者チームの技術力とスピード感、そして「人間とAIが協働してソフトウェアを作る未来を切り拓く」という明確なビジョンがあった
競合であるWindsurfもまた、自社モデルを武器に無料プランでユーザーを急拡大させ、企業導入を進めるなど、激しい競争の中で互いに磨き合う構図が生まれている
非開発職であっても利用は可能で、プロダクトマネージャーやIT業界を中心に利用が広がる可能性が高いが、一方でセキュリティリスクへの考慮は必要
おまけとして、AIコードエディターで、Notionなどで行うタスク管理をすべて移行させるような事例がでてきているそうです。AIの補助があると自由度が高く、プロジェクト管理から日記まであらゆるシーンで便利になるそうです。
興味があるかたはCursorをDLして試してみてください。
今回は以上です。では、また👋
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