2025年3月6日に、中国発の自立型AIエージェント「Manus AI」が中国のソーシャルメディア(微博/Weibo)を中心に爆発的に注目を集め、現在Xでも加熱し始めています。
DeepSeekのインパクトから冷めてきた頃だと認識していましたが、China AIはかなり急速に成長しているようです。
招待コード制となっており、中国で5万元(約70万円)で取引されるほどの熱狂となっているようです。しかし、この現象が単なるバズなのか、技術革新なのかは未だ招待制で利用できない状態のため、個人的には掴みきれていません。
今回はそんなManus AIについて、デモ動画やXでの利用者からのレビューなどを参考にしつつ、現状わかっていること、理解しておくべき点をぼくなりにまとめ、今後の業界への影響を考察します。
Manus AI:中国発自律型AIエージェントの実力と可能性
Manus AIとは何か
Manus AIは中国のスタートアップ「Monica.im(ChatGPTなどのブラウザ拡張機能などを提供するAIスタートアップ)」が開発した「汎用AIエージェント」です。従来のChatGPTのようなチャットAIと異なり、単に回答や提案を行うだけでなく、ユーザーの指示に基づいて実際にタスクを遂行し、成果物を提供します。
創設者であるシャオ・ホン(肖弘)氏を一躍脚光を浴び、公開情報によると、1992年生まれのXiao氏は、DeepSeek創設者のLiang Wenfeng氏(1985年生まれ)より7歳年下のミレニアル世代の起業家だそうです。
華中科技大学のソフトウェアエンジニアリングプログラムを卒業したそうですが、清華大学など中国における有名大学出身でなくとも優秀な人材がいるという意味で中国テクノロジー業界でのAIの急成長を予感させます。
ベンチマークでは、GAIA(推論、マルチモーダル性、Webブラウジングなどの指標でAIの性能をテストするベンチマーク)において、OpenAIのDeep Researchだけでなく、過去最高レベルの採点(SOTA:State of the Art)さえをも凌駕するパフォーマンスを達成した、という点が興味深いです。
Manus AIのサイトを訪れると、ユースケースが複数掲載されています。試した結果を簡単にまとめます。
例:テスラ株の深堀り分析
ユースケースギャラリーの例は、実際に実行されたデモ動画のリプレイになっています。
プロンプト
処理が自動的にすすみ…
果作成されたサイトがこちら。
これ出せるまでにはたった1時間程度(デモなのでスキップ可能)であり、簡単なやりとりを3回ほどしたに過ぎないことを踏まえると、優秀に思えます。プロがやってもおそらくは1週間以上はかかるのではないでしょうか。
その他には、
履歴書15通を自動選考してExcelでランキング表を作成
安全な学区の不動産物件をリサーチしてリストアップ
複数企業の財務データを収集・分析して投資レポートを作成
などが例として見ることができるようです。
つまり「AIに指示を出す→AIが自律的に作業→結果を提示する」というフローが実現されています。
これはChatGPTのような会話型AIが「こうすればいいですよ」と提案するところから一歩進み、「実行しました、結果はこちらです」というところまで、内部に搭載された複数のモデルと実行環境によって達成するというものです。
ちなみに、OpenAIのDeep Researchレベルの探索ができるのは、現状ないと認識しており、かつClaudeのような自然なデザインを実現できるというのは唯一のものではないかと思います。
重要な点は、Manus AI自体はLLMではなく、AIエージェントを自律的に行なうフレームワークのようなものを提供している点です。おそらく、裏側ではOpenAIやClaude、もしくはオープンソースのLLM最新モデルを用いており、それらを最大限に自律的に機能するようにエージェントサービスとして提供している、これがManus AIの立ち位置です。
技術的アーキテクチャ
Manus AIは、現在のところオープンソースにはなっていませんが、2025年中には公開するそうです。
Manus AIが登場した3時間後に、Manus AIをオープンソースにフォークしたOpenManusというものが現れたそう。このGithubを参考にすると、仕組みとしては、
メインエージェント:ユーザーの意図を理解し、全体計画を立案
プランニングエージェント:全体の目標を具体的な作業ステップに分解
実行エージェント:ウェブ検索、コード生成・実行、外部ツール操作などを担当
などが、相互に役割特化して、ユーザーからの命令を遂行するような設計みたいです。
OpenManusは、既にGithubで1.7万のスターが付いていました。
実際の使用レビューを調査した結果
招待コードを入手できた一部のユーザーや第三者開発者からは、Manus AIの実力に驚きの声が上がっています。
特に興味深いのは、TeslaでManus AIを使用して、ミーティングに自動運転で向かう途中に、Manus AIがミーティングアジェンダの整理を進めてくれているというものです。
https://x.com/ManusAI_HQ/status/1898443490822140407
また、Manus AIを複数台で実行した感想として、AGIに近いAIという感想も見受けられた(個人的には誇張表現のように思う)。
リサーチ能力は非常に高いが、開発力はまだ別のツールの方が優位性があると語っている点は興味深い。
こちらも、Xで投稿されていた動画だが、スマートフォンを仮想的に立ち上げて複数のソーシャルメディアを自律的に行わせるといったこともできるようです(ただし、Manus AIが本当に用いられているのか真偽は不明)。
今後のManus AIの可能性と業界への影響を考察
Manus AIは現時点で汎用AIエージェントの先駆けと言える存在ですが、これで完成形ではなく、ベータ版です。
将来的には、さらなる外部ツール連携(より多くのサードパーティアプリとの統合)、リアルタイム画像・動画理解能力の強化、意思決定の倫理面の向上(AIが勝手に不適切な判断をしないよう制御ガイドラインの整備)などが課題として挙げらると思います。
また、OpenAIも自律型AIエージェントを月20万ドルで展開する計画も発表しています。Manus AIはおそらくは有力な競合となるでしょう。OpenAIの自律エージェントの報道ついては、ビデオポッドキャストで詳しく解説しています(以下の動画の19:40あたりがこの話題です)。
生成AIニュース解説:GoogleのCo-Scientist/Alexa+/a16zが示すトップAI100アプリ/GPT-4.5はスケーリング則の終わり?など
この放送は、テック系リサーチャー・ポッドキャスターのLawrenceが、生成AIを中心とした最新のテクノロジーと、急成長スタートアップのビジネスモデルを考察し、ビジネスや投資に活かすインサイトを独自の視点からお届けしているビデオポッドキャストです。
今回のManus AIのインパクトを考えると、AIエージェントによるAI自体が実際の成果物を納品できる時代は、ますます近づいているように思います。
もう少し長いタイムラインを想定していましたが、2025年中には業界が驚くようなAIエージェントが、一般公開されると予想します。
今回は以上です。
では、また👋
Lawrence
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